出産手当金との兼ね合いに注意!産休中の有給休暇をお得に取る方法
出産を控え、産休を取得するとき、やはり気になるのはお金のこと。
産休に入る前に有給休暇がどのような扱いになるか知っておきたいかもしれません。
そこで、今回は、産休と有給休暇について、取得の可否と実際のもらえる金額の計算方法、退職するときはどうなるのか、産休を取得した後の有給の取り扱いなどについて解説します。
産休中でも有給休暇は使える
女性が産休を取得すると出産手当金がもらえます。失業手当とは違い、仕事を休んでいるだけで、会社に在籍しながらもらえる手当。似た性質のものに、有給休暇があります。
産休取得中でも、色々な事情で有給休暇を使いたいこともあるでしょう。使えるのでしょうか?
産休中は、出産前であれば、有給休暇を使えます。
ただし、有給休暇を取得した日は、出産手当金がもらえないので注意してください。出産手当金と有給の二重取りが目的であれば、残念ながら、それはできません。
もうひとつの注意点は、有給の取得は産前しかできないことです。
労働基準法には「母性保護規定」があります。産後8週間の労働が禁止というもの。有給休暇は、労働日に休む場合に適用されるものですから、そもそも働いてはいけない産後8週間は、有給を充てられません。
産後8週間内の休みに有給休暇の取得を認めてしまうと、会社が罰せられる可能性があります。そのため、相談しても使えません。
一方、産前の産休は、希望者は休暇を取得できるというだけのルールなので、本人が働くといえば会社は働かせても良いのです。産休は取らず、有給休暇で休めます。
このように産休中の有給休暇の取得は、タイミングによって使えないこともあるので、産休に入る前に計画を立てておくと良いでしょう。
出産手当金より有給休暇の方が高い
出産手当金ではなく有給休暇の取得を考える理由のひとつに、出産手当金より有給休暇の方がもらえる金額が多いことが挙げられます。
出産手当金は、おおよそ給与の2/3になります。
出産手当金の計算式は、次の通りです。
- 1日の額:支給開始日の以前12カ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)
- 対象期間:出産の日以前42日(双子などは98日)〜出産の翌日以後56日目
「1日の額」×「対象期間の日数」が受け取れる出産手当金額です。
標準報酬月額は、給与額を枠にあてはめて標準的な数字に換算したもので、実際の給与額とは異なります。
ひと月を出勤日数ではなく30日で割り、さらに2/3になるので、時給で働いている人はより少なく感じるかもしれません。
出産日が予定より遅れると、「出産予定日以前42日間+出産予定日から出産日までの日数+出産翌日以降56日間」になり、少し得します。
有給休暇は、一般的に満額もらえる会社が多いです。ただし、有給休暇は6割支給という会社もあるので、その場合は出産手当金の方が高くなる可能性はあります。
一般的には有給の方が多いですが、産休に入る前に給与が減ったなどのケースでは、有給の方が少なくなる可能性もあります。こうしたケースで産休中に有給休暇を取得した場合、差額が出産手当金からもらえることがあります。
- 勤務先の健康保険に加入している
- 妊娠4ヶ月以降の出産
- 出産のために休業している
妊娠4ヶ月未満の流産は対象になりません。
有給も出産手当金ももらいたいなら産休前に有給を使う
産休明けに退職する予定の場合、「有給も消化したいし、出産手当金も満額欲しい…」という人も少なくありません。
このケースでは、産休に入る前に計画的に有給を使っておきましょう。ただし、一点注意があります。
退職日は、出産手当金の対象期間内に設定し、仕事は休む必要があります。引継ぎなどで出勤してしまうと出産手当金がもらえません。退職日を有給休暇でお休みにすれば問題ありませんので、退職日と出産手当金の対象期間をよく考えて取得してください。
退職予定であれば、産休前に有給休暇を消化しておくと良いのですが、退職せずに仕事に復帰する場合は、無理に有給を使わず残しておくのがおすすめです。
体調が不安定になるかもしれませんし、赤ちゃんが熱を出したりして休むことも多くなるでしょう。
有給休暇を取る方が休みの間の受け取れるお金は多いですが、後から困ることになりかねませんので、よく検討して使いたいです。
産休中の意外なメリット!給料が社会保険料免除
実は、産休中は、意外なメリットがあります。
産休中に取得した有給からは、社会保険料が引かれないのです。
また、産休中にボーナスが発生したときも、社会保険料は免除されます。ボーナスの社会保険料は二重取りなどと言われて評判が悪いですよね。かなり高額が引かれて毎回ショックと言う人も少なくありません。
これが引かれないのは嬉しいのではないでしょうか。ちょうど産休中にボーナス支給があるかは運次第でしょうが、もし産休とボーナス支給が重なったらラッキーです。
社会保険料が免除されるので、普段の有給取得より、受け取れる金額は多くなります。
産休中に出産手当金より有給を使った方が良いのはボーナス支給がある場合
ここまでお伝えした通り、産休中に有給休暇を取得するのが、その時の額面だけは多くなります。
その分、出産手当金が減額されたり、仕事復帰後に使える有給休暇がなくなってしまったりと、あまりメリットはありません。
しかし、実は、産休中に有給を使った方が得するかもしれないケースがあります。
退職予定があり、産休期間中まで在籍すればボーナスが支給されるケースです。
ボーナスは、一般的に一定期間在籍した社員が対象となり、査定期間が設けられていることが多いと思います。産休に入る前に退職するとボーナス対象外になるものの、産休中まで在籍があればボーナス対象になるような微妙な日程の場合は、有給休暇を上手く使って産休中まで在籍期間を延ばし、ボーナスをもらう方がお得かもしれません。
ボーナス額が少ないなら、有給を産休前に消化する方がいい可能性も出てくるので、ボーナス額との兼ね合いで検討してみてください。
出産手当金の申請は3つの書類が必要
出産手当金を申請する際は、「自分」「医師・助産師」「会社」が記入する書類があります。3種類用意する必要があるということです。
自分と医師分の書類を用意して、産休明けに会社が手続きしてくれることもあります。担当者に聞いてみると良いでしょう。
出産手当金を受け取れるまで、申請後2~3ヶ月かかると考えてください。時間がかかるので、その間はお金が入ってこないので、余裕をもってお金の準備をしておくことをおすすめします。
また、出産手当金の申請期間は、産休が開始した翌日から2年間です。受け取りを急がないのであれば、体調などの様子をみて、落ち着いてから申請しても問題ありません。
産休を取っても翌年の有給休暇の日数に影響なし
ここまでは、産休中に有給休暇を取得するための注意点などをお伝えしました。ここでは、産休を取った後の有給休暇について見ていきましょう。
気になるのは、産休の翌年の有給休暇の付与日数ではないでしょうか。
有給休暇の付与日数は、前年度の出勤率によって変わります。産休・育休で長期間休暇を取った場合、出勤率が下がり有給休暇の付与日数が減るのではないか心配する人も少なくありません。
産休・育休を取った日数は、出勤率の計算上、出勤とみなされますので安心してください。
産休・育休を取得しても、有給休暇の日数に悪影響はありません。産休・育休中に次の有給休暇が発生する場合も、通常通りに付与されて、復帰後に問題なく使えます。
産休中の有給休暇は産休前に計画を立ててお得に立ち回ろう!
産休中でも、出産前に限り、有給休暇は取れることをお伝えしました。
退職を予定していたり、ボーナスがあったり、それぞれの事情によって、得になる産休の取り方や有給休暇の使い方は違います。
産休中の有給休暇は、産休に入る前に計画しておくのが賢く立ち回るコツです。ぜひ、ご自身のケースに照らし合わせて、ベストな方法を検討してみてください。